図書館戦争は作家有川浩による、小説。2006年に刊行され、本編シリーズ全4巻と外伝シリーズ『別冊 図書館戦争』全2巻からなる。2007年に漫画化、2008年にアニメ化、2013年、2015年に映画化、さらに2015年にはテレビドラマ化されている。また、本シリーズは有川浩の最長作品にして代表作である。
1972年6月9日生まれ。日本の女性小説家、ライトノベル作家。高知県出身。
2003年に『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞し、翌年に同作にてデビューした。名前の由来は、「有川」は書店に本が並んだ時に“あ”から始まる名前なら棚の最初のほうにくるから、「浩」は、親が喜ぶと思って本名から一字抜出したとのこと。
デビューからしばらくの間は、主にSF・ミリタリー色の濃い作品を発表しており、自衛隊と未知の物体・生物との接触をテーマにした 陸上自衛隊の『塩の街』、航空自衛隊の『空の中』、海上自衛隊・海上保安庁・機動隊の『海の底』は合わせて自衛隊三部作と称されている。また、2006年にスタートした『図書館戦争』シリーズでも「図書隊」という架空軍事組織が存在するパラレルワールドが描かれている。2006年頃からは、『レインツリーの国』や『阪急電車』など、実世界を舞台にした作品も刊行されている。
悪影響を与えるメディアへの取り締まりが法制化され、元号も昭和から平成ではなく「正化」になったと設定された架空の日本を背景に、武力行使も辞さない強引な検閲に対抗して本の自由を守るため、図書館法に沿って設立された図書館の自衛組織・「図書隊」を舞台とする。 その中でも、通常図書館業務から大規模制圧戦まで全業務に精通する精鋭部隊「図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)」の奮闘と恋愛模様を描く。
1988年、公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を規制するための「メディア良化法」が制定される。法の施行に伴い、メディアへの監視権を持つメディア良化委員会が発足、不適切とされたあらゆる創作物は、その執行機関である良化特務機関による検閲を受けていた。検閲が妨害される際には武力制圧も行われ、情報が制限され自由が侵されつつあるなか、弾圧に対抗した存在が図書館だった。
実質的検閲の強行に対し、図書館は「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の自由法」を制定。表現の自由を守るべく、図書館は自主防衛の道へと突き進み、図書隊と良化特務機関との永きに渡る抗争に突入する。時代が昭和から正化へと移ると、図書隊は激化する検閲によって防衛力を増し、メディア良化委員会との対立は激化の一途をたどっていた。
ある日、高校3年生の郁は、検閲に遭遇したところをある一人の図書隊員に救われる。幼少時代から大好きな本を守ってくれた図書隊員を“王子様”と慕い、自分も彼のように「検閲から本を守りたい」と思い、図書隊を目指しはじめた。そして、郁は念願の図書隊へと入隊を果たす。しかし、指導教官である堂上篤は、郁が目指した憧れの図書隊員とは正反対の鬼教官だった。それでも郁は、顔も名前もわからない王子様に少しでも追いつきたいと、過酷な訓練をこなしていく。やがて、郁は全国初の女性隊員として図書特殊部隊に配属され、堂上のもとで幾多の困難に対峙しながら、仲間とともに助け合い、成長していく。
防衛部・図書特殊部隊所属・堂上班班員。一等図書士。身長170cm。
本作の主人公。茨城県水戸市出身。史上初かつ唯一の女性の特殊部隊隊員。幼少のころから本が大好きで、高校3年生の秋、良化機関員の検閲から救ってくれた王子様(図書隊員)に憧れて図書隊員を志す。
高身長と戦闘職種ゆえにすっきりと鍛えられすぎた体つきがコンプレックス。髪型はストレートのショート。
防衛部・図書特殊部隊所属。二等図書正。身長165cm。堂上班・班長。
郁、小牧、手塚を擁する班の班長を務める、郁の直属の上官。
班内で一番身長が低く、郁との口論の際に何度か“チビ”と言われている。責任感が強いため郁には必要以上に厳しく指導するが、必要があれば彼女を正しい方向へ導き支える。性格・外見とも真面目で実直であるため、外部の人間と接する必要がある場面では重宝されるが、部隊内ではいじられ役。
防衛部・図書特殊部隊所属。二等図書正。身長175cm。堂上班・副班長。
図書大学校時代からの堂上の同期で、学生時代は学年首席を取ったり取られたりする間柄であった。防衛部に配属されてから3年後、堂上とともに図書特殊部隊に抜擢された。
笑い上戸で、スイッチが入ると必死に堪えるものの、時には堪えきれず席を外す程である。
防衛部・図書特殊部隊所属。一等図書士。身長180cm。
郁とは同期で図書館協会会長の父を持つエリート。家族の問題から、図書隊員および特殊部隊員として優秀な存在になることを目標としている。
几帳面で努力家で誠実だが、完璧主義で融通が利かず恋愛に疎い。入隊当初は優秀とは思えない郁が特殊部隊に配属されたことに不満を持っていたが、のちに自分の価値観とは異なる視点から郁の長所を見るようになった。郁への説教など、尊敬する堂上に言動が似つつあるので、時に郁から「プチ堂上」と呼ばれる。
業務部・武蔵野第一図書館所属。一等図書士。身長157cm。
郁の寮でのルームメイトで親友。郁、手塚とは同期。情報通であり、実験構想中の情報部候補生。防衛部の郁や手塚と同じ試験で昇進している、業務部の出世頭。
長いストレートヘアが特徴のかなりの美人。利用客だけでなく業務部・防衛部の中にもファンが多い。しかし、実際は外見とは裏腹に勝気で容赦のない性格。
図書館戦争の大きな魅力のひとつである印象的な表紙は、イラストレーターの徒花スクモさんによって描かれている。読む前はいまひとつピンと来ないかもしれないが読み終わって表紙を眺めてみるとイラストの一つ一つに物語との関わりがあり、とても面白い。
図書隊シンボルマークはカミツレと本を組み合わせたデザインになっている。カミツレは作中で「日野の悪夢」において命を落とした稲嶺夫人が好んだ花であり、花言葉は「苦難の中の力」「逆境に耐える力」である。作中では郁と堂上の距離が縮まるきっかけとなる、キーアイテムである。
2013年に堂上役の岡田准一と郁役の榮倉奈々のダブル主演で映画第1作が公開された。2015年にはテレビドラマ『図書館戦争 BOOK OF MEMORIES』、映画第2作『図書館戦争-THE LAST MISSION-』が放送・公開された。主演の二人は、かつて文芸誌『ダ・ヴィンチ』で企画された「読者が選ぶ誌上キャスティング」において、圧倒的な投票数で第1位となったコンビであり、柴崎役の栗山千明は有川による執筆当時からのイメージモデルでもある。また、堂上のバディである小牧役を田中圭が、郁のバディである手塚役を福士蒼汰が務めた。
シリーズ第1作目『図書館戦争』は、防衛省・陸上自衛隊・航空自衛隊の全面協力を受けて実写映画化された。2013年4月27日からTOHOシネマズスカラ座他全国311スクリーンで公開され、3日間の観客動員数は25万7,158人、興行収入3億3千万円を超え、作品の満足度98.2%という高数値を記録した。最終興行収入は17.2億円。
続編『図書館戦争-THE LAST MISSION-』は2015年10月10日に公開された。日本全国323スクリーンで公開され、公開初週土日2日間の全国映画動員ランキングで初登場1位を獲得した。翌週の10月17日・18日の同ランキングでも1位となった。最終興行収入は18億円。